京浜電気鉄道(以下京急)の前身である湘南電気鉄道創業時の瀬戸変電所が現在も健在だ。場所は、京急本線と逗子線が分かれる金沢八景駅西側、上り線ホームのすぐ脇である。昭和4年に建造された瀬戸変電所は、鉄筋、鉄骨コンクリート製の建物で、昭和58年まで使用されていた。現在は、整流器や関連機器は取り払われ、碍子、天井クレーンや大きな室内空間が当時の名残として息づいている。ここで生まれた直流電源で、湘南デ1形から始まった湘南や京急の名車がモーター音も高らかに高速で首都圏と湘南地区を結んでいた。1000形、600形、2000形の快速特急が活躍できたのは、瀬戸変電所があったからなのである。そしてこの建物が湘南電鉄時代を代表する建造物として現存する貴重な近代化遺産でもある。
約4年前、老朽化を理由に京急は、瀬戸変電所の取り壊しを決めた。これに対して当公益社団と横浜市都市デザイン室が京急に保存を申し出た。幸い京急は保存に理解を示し、方向を転換。当公益社団と横浜市がコラボして修理後、保存・活用することになった。これまでにコンクリートの強度検査や地盤、建物の耐震等を専門の研究者に依頼して調査を実施した。さらに2020年度からは、耐震や修復工事に向けた工事費の見積もりに入った。
今後は、京急から当公益社団が建物の寄贈を受け、修復を行い保存・活用する予定だ。変電所の保存事例では、旧信越本線碓氷鉄道施設の丸山変電所(国重要文化財)が知られるところである。
瀬戸変電所は駅隣接の立地を生かし、魅力的な活用を模索している。
皆様のご支援ご協力を改めてお願いいたします。 |