【団体の趣旨】
横浜市港南・磯子区の久良岐(くらき)公園に展示されている「横浜市電1156号」を、修復・維持するとともに、昨年4月から一般公開イベントを開催しています。
1156号は横浜市電1150号型の最後の現存車であり、1972年に全廃された横浜市電の保存車両の中でも、貴重な存在です。「街に市電が走っていたころ」を伝える貴重な遺産と位置づけ、横浜市や地元企業、市民の皆さんと協力しながら、後世に伝えるべく活動しています。

【保存の経緯】
2010年末、神奈川新聞の鉄道好き記者が「1156号解体」の知らせを聞き、横浜市にボランティアによる修復を申し出たことがきっかけです。その後、同公園近くの塗装業「サカクラ」が、地域貢献の一環として修復作業に全面的に協力してくれることになり、2011年11月、1156号の所有者である横浜市環境創造局、株式会社サカクラ、神奈川新聞社の3者が、市電保存に関する「覚書」を締結しました。また、相模鉄道には、座席シートなどの部品を、無償でご提供いただきました。
神奈川新聞社は、紙面を通じた広報や、修復に際しての時代考証、資料・部品の調達などを担当。サカクラは、板金やガラス加工、電気などの業者とともに大規模な工事を担当しました。修復は2012年1月から4月にかけて実施。内外の修復と再塗装に加え、ヘッドライトや室内灯の点灯も可能となりました。

【現在の活動】
4月の工事完成後も、「系統板受け」の取り付けやシートの張り替えなど、より「現役時代」に近づけるべく、細かな修復を続けています。あわせて、1〜2カ月に1回のペースで、清掃と車内公開イベントを開催しています。今後は、かつて市電に勤めていた方々への聞き取りや、神奈川新聞社が所蔵する資料写真の活用などを通じて、より多角的な「記憶の継承」に取り組んでまいります。

【横浜市電とは】
1904(明治37)年に開業した路面電車。最盛期には総延長51.79kmの路線を運行、年間1億2千万人を輸送したが、道路渋滞や国鉄根岸線の開業などの影響で、1966(昭和41)年から順次廃止され、1972(昭和47)年3月31日を最後に全廃された。現存車両は、横浜市磯子区の「市電保存館」の7両のほか、横浜市内に4両(野毛山動物園、久良岐公園、県警交通安全センター、市立中田小学校)が残るのみ。(写真左:2011年9月/右:2013年8月)
2011年9月   2013年8月