は じ め に
 
    日本鉄道保存協会が設立されて、今年で早くも18年となりました。
 この間、微力ながらも多くの皆さまのご支援とご協力を頂きながら活動を続けてまいりました。加盟団体はようやく30に達し、より一層の広がりをみせて来ていることは喜びにたえません。
 最近では、歴史的車両の動態保存や静態保存が全国各地で推進され、広く一般の皆さんの関心を集めつつあります。また、歴史的車両だけでなく、駅舎・橋梁・隧道などの鉄道遺産を地域活性化の核として保存・活用する事例も多く見られるようになりました。これらは我が国の近代化遺産として誇るべきものであり、私たちの大切な宝物として後世に伝え残していきたいものです。
 いま、鉄道ブームの時代と言われ、多くの日本人が鉄道に対する関心を深めています。世界的な燃料高騰の中で、鉄道見直しの機運が高まり、国の政策も鉄道を中心とする公共交通の再評価に向かっています。これらは私たちの活動にとってありがたい追い風です。
 一方で、私たちの活動は大きな困難にも直面しています。多くの保存団体に共通する財政難の問題は言うまでもありませんが、そのほかにも最近の傾向として、意気込み高く始めた保存事業が時の経過とともに勢いを失う事例や、市町村の合併に伴って管理運営の困難を来している事例も見られます。この鉄道保存協会自体も、組織と言うにはあまりにも脆弱な存在であり、体質強化の必要に迫られています。これらの難問をどのようにして克服していくか、これからの保存運動の試練と言えましょう。
 この総会は、正会員たる加盟団体と賛助会員が一同に会し、鉄道保存運動に関心を持たれる多くの方々をオブザーバーとしてお招きして、お互いの経験を語り知識と意見を交換する貴重な機会です。本年は来賓として国土交通省の地域鉄道対策室長と英国鉄道保存協会の会長をお招きし、講演をして頂きます。その後の事例報告と討論では、参加者の皆さんの活発な発言を通じて、全員が明日の保存運動のための知恵と勇気を見いだせることを期待いたします。
  
 
2008年10月
日本鉄道保存協会代表幹事団体
(財)交通文化振興財団理事長 菅 建彦